はじめに:営業人材採用の重要性と現状
会社の成長には「売上」が欠かせません。そしてその売上を生み出すのが営業部門です。優秀な営業スタッフがいれば会社は成長しますが、逆に営業力が弱ければ、どんなに素晴らしい商品やサービスがあっても売上につながりません。
近年、多くの企業が営業人材の採用に苦戦しています。特に営業職の採用難は深刻です。これには、若者の営業職離れや、働き方の多様化など、様々な要因が影響しています。
今一度、御社の就業内容、条件を見直して求人者に対して魅力ある環境を準備する必要もあると思います。
関西営業代行事務所でも、ビジネスパートナー(業務委託)として、優秀な営業マンの採用を通年行っていますが、合格基準を満たす人材がなかなかいません。人材がいないのではなく、魅力的な就業内容になっていないのかもしれません。
この記事では、営業人材を採用する際に注意すべきポイントを詳しく解説します。採用担当者はもちろん、経営者や営業マネージャーにも参考になる内容です。
営業人材採用前の準備段階での注意点
自社の営業スタイルと必要なスキルの明確化
営業と一言で言っても、会社や業界によって営業スタイルは大きく異なります。以下に例を挙げます。
- 「飛び込み営業」が中心の会社
- 「提案型営業」が主体の会社
- 「ルート営業」が多い会社
- 「インサイドセールス」(電話やメールでの営業)が中心の会社
自社の営業スタイルに合った人材を採用するために、まずは「自社はどんな営業をしているのか」「どんなスキルが必要なのか」を明確にする必要があります。
関西営業代行事務所では、電話営業(テレアポ)、対面営業、提案型営業のご依頼が多く、これらのスタイルを中心としており、このスキルが高い人材を必要としています。
適切な採用基準の設定
営業職に求められる能力やスキルを具体的にリストアップします。
- コミュニケーション能力
- 聴く力(ヒアリングスキル)
- 商品知識を理解・説明する力
- 忍耐力・粘り強さ
- 法律および会計の知識
- 報連相(報告・連絡・相談)の徹底度
これらの中で、特に自社にとって重要な項目はどれか、優先順位をつけておくことが大切です。
関西営業代行事務所では、法人営業の経験が豊富、実績があることはもちろんのこと、傾聴(ヒアリング)と提案力を営業の重要なスキルと判断しています。なぜなら顧客の課題を見つけ、それを解決することが営業の仕事だからです。まずはこの2つのスキルが優先順位の上位です。
予算と採用スケジュールの現実的な計画
営業人材の採用にかかるコストには、求人広告費だけでなく、面接時間や研修期間の人件費なども含まれます。また、採用から即戦力になるまでの期間も考慮しなければなりません。
特に注意したいのは、「すぐに結果を出せる営業マン」を求めすぎないことです。優秀な人材ほど、入社後すぐではなく、3ヶ月〜半年程度の期間をかけて成果を出していくことが多いです。現実的な期待値を設定しましょう。
関西営業代行事務所では、即戦力が必要なため、ほぼ教育の必要がない人材を採用しています。が、必要に応じてセールスリテラシー®教育を計画しています。
求人票作成時の注意点
魅力的な求人票の作り方
求人票は「会社の顔」です。以下のポイントに注意して作成しましょう。
- 具体的な仕事内容を記載する:「営業職」だけでなく、1日の流れや具体的な業務内容を書くと応募者のイメージが湧きやすくなります。
- 成長できる環境をアピールする:研修制度や先輩社員のサポート体制など、入社後に成長できる環境があることを伝えましょう。
- 会社の強みや特徴を明記する:「なぜこの会社で働くべきか」という理由を明確に示しましょう。
避けるべき表現と効果的な訴求ポイント
避けるべき表現
- 「バリバリ働ける方」「ガンガン稼げる方」などの抽象的な表現
- 「ノルマなし」(実際にはある場合)
- 「未経験者歓迎」(実際には経験者を求めている場合)
効果的な訴求ポイント
- 具体的な成功事例(「入社2年目で月収○○万円達成した社員もいます」など)
- 営業活動のサポート体制(「営業資料は専門チームが作成します」など)
- 働きやすい環境(「残業月平均○時間」「リモートワーク可能」など)
給与・インセンティブ体系の提示方法
営業職の場合、基本給だけでなくインセンティブ(歩合給)制度があることが多いです。以下の点を明確に記載しましょう。
- 基本給の額
- インセンティブの計算方法(売上の何%か、達成度に応じた段階制か)
- 平均的な月収例(「月収例:30万円〜50万円」など)
- 賞与の有無や支給条件
曖昧な表現や、実態と異なる給与イメージを与えないように注意しましょう。
応募者側に立ち、どんな質問をされるかをあらかじめ想定し、その質問の答えを求人票に記載しておくことがポイントです。
採用チャネル選択の注意点
各採用チャネルの特性と適した人材層
採用チャネル(求人媒体や採用方法)によって、集まる人材の特性が異なります。
- 求人サイト:幅広い人材に情報を届けられるが、応募者の質にばらつきがある
- 転職エージェント:専門性の高い人材を紹介してもらえるが、コストが高い
- SNS採用:若手人材にリーチしやすいが、継続的な情報発信が必要
- リファラル採用(社員の紹介):文化的フィットの高い人材が見つかりやすいが、量は限られる
自社のWEBサイトへの採用情報も必須です。関西営業代行事務所の場合、indeedなどの求人サイトと自社サイトの採用情報掲載をチャンネルとしています。
自社が求める人材像に合わせて、適切なチャネルを選びましょう。
コスト対効果の高い採用媒体の選び方
採用媒体にかかるコストは様々です。以下の点を考慮して選びましょう。
- 掲載費用(無料〜数十万円)
- 応募数の見込み
- 採用までのサポート体制
- 過去の採用実績
特に中小企業の場合は、大手求人サイトだけでなく、地域特化型の求人媒体や業界特化型の媒体も検討してみましょう。
リファラル採用・SNS活用時の注意事項
リファラル採用の注意点
- 紹介者と被紹介者の関係性で判断せず、公平な選考を行う
- 紹介制度のルール(紹介料の有無など)を明確にする
- 不採用となった場合の紹介者へのフォロー方法を考えておく
SNS活用時の注意点
- 企業イメージと一致した発信を心がける
- 定期的な更新が必要(放置されたアカウントは逆効果)
- 採用目的だけでなく、会社の魅力や日常を伝える内容も含める
面接・選考プロセスでの注意点
営業適性を見極めるための効果的な質問
営業職の適性を見極めるためには、以下のような質問が効果的です。
- 「過去に困難な状況を乗り越えた経験は?」(粘り強さの確認)
- 「お客様から断られた時、どう対応しますか?」(ストレス耐性の確認)
- 「商品Aについて、今から1分で説明してください」(表現力・理解力の確認)
- 「前職での具体的な営業プロセスを教えてください」(経験の深さの確認)
また、質問への回答内容だけでなく、目線や姿勢、話し方なども総合的に観察することが大切です。
関西営業代行事務所では、「この商品(サービス)Aは、誰の、どんな悩みを解決していますか?」等の質問で、売る側の視点ではなく、買う側の視点を持っているかどうかを判断しています。
また最近は、WEBやITサービスも増えているため、これらの知見があるかどうかの質問も実施しています。
過去の営業成績の評価方法
応募者が過去の営業成績をアピールしてきた場合、以下の点に注意して評価しましょう。
- 数字だけでなく、その成績を上げるために何をしたのかを具体的に聞く
- 前職と自社では商材や市場が異なるため、単純な数字比較はできないことを理解する
- 「トップセールス」という表現の具体的な内容(何人中の1位か、どのくらいの期間か)を確認する
※過去の営業成績に関しては、あまりあてにしなくてもよいと考えています。その会社、商品サービス、売り方により難易度を標準化することが困難だからです。
モチベーションと長期定着可能性の見極め方
離職率の高い営業職では、モチベーションの源泉と長期定着の可能性を見極めることが重要です。
- 「5年後、どんなキャリアを描いていますか?」
- 「営業職を選んだ理由は?」
- 「仕事のやりがいをどこに感じますか?」
- 「前職を退職した本当の理由は?」
これらの質問を通じて、金銭的な動機だけでなく、成長意欲や仕事への価値観を確認しましょう。
関西営業代行事務所では、「何があれば(どうすれば)長期的に働いていただけますか?」など応募者側の立場で質問することで長期定着の可能性を見極めています。
実践的なロールプレイングの活用法
面接だけでは分からない実践的なスキルを確認するために、ロールプレイングは非常に効果的です。
- 面接官が顧客役、応募者が営業担当者役になる
- 実際の商品・サービスを題材にする
- 突然の異論や質問にどう対応するかを見る
- 初対面の人との信頼関係構築能力を確認する
ただし、応募者に過度なプレッシャーをかけないよう配慮することも大切です。
よくある採用ミスと回避方法
営業実績だけで判断するリスク
過去の営業実績が優秀だからといって、自社でも必ず成功するとは限りません。以下のようなリスクがあることを理解しましょう。
- 前職では優良顧客を多く持っていたが、それが自社では通用しない
- 前職では手厚いサポート体制があったが、自社にはない
- 商材や市場が大きく異なり、営業手法の転用が難しい
実績だけでなく、その背景や自社との適合性も含めて総合的に判断することが重要です。
「話が上手い」だけの人材を採用する落とし穴
面接で話が上手い人が、必ずしも優秀な営業パーソンとは限りません。以下のような落とし穴に注意しましょう。
- 話すことは得意でも、「聴く力」が弱い場合がある
- 表面的な対応は良くても、粘り強さや継続力に欠ける場合がある
- 同僚との協調性や社内での情報共有が苦手な場合がある
面接での印象だけでなく、複数回の面接や実践的な課題を通じて多角的に評価することが大切です。
私自身の経験では、立て板に水を流すがごとく話す人材よりも、多少寡黙でたどたどしい話し方でも、一緒になって相手の問題解決を目指す人材の方が結局は営業成績がよかったケースが多々ありました。決して「話が上手い」だけで評価しないように注意する必要があります。
自社の営業スタイルとのミスマッチ
応募者の得意な営業スタイルと、自社の営業スタイルが合わないというミスマッチは意外と多いです。
- プッシュ型営業が得意な人を、コンサルティング型営業が中心の会社で採用
- 一人で成果を出すのが得意な人を、チーム営業が基本の会社で採用
- 対面営業が得意な人を、インサイドセールス(電話・メール営業)中心の会社で採用
採用前に、自社の営業スタイルと応募者の適性が合っているかを確認することが重要です。
入社後の定着に影響する採用時の注意点
入社後のギャップを防ぐための情報開示
「入社したら聞いていた話と違った」というギャップは、早期離職の大きな原因となります。以下の情報を採用プロセスで正直に伝えましょう。
- 実際の営業活動の詳細(訪問件数、商談数の目安など)
- 営業チームの雰囲気や社風
- 成果を上げている社員の特徴や行動パターン
- 営業活動におけるサポート体制の実態
理想的な面だけでなく、大変な面も含めて伝えることで、入社後のギャップを減らすことができます。
研修体制・教育制度の事前説明の重要性
未経験者や経験の浅い応募者にとって、入社後の教育体制は重要な判断材料です。
- 研修期間と内容(商品知識、営業スキル、ビジネスマナーなど)
- OJT(実地研修)の方法(先輩社員の同行など)
- 研修期間中の評価方法
- フォローアップ研修の有無
具体的な研修制度を説明することで、「しっかり育ててもらえる」という安心感を与えることができます。
関西営業代行事務所では、「セールスリテラシー®」という、営業活動に必要な知識とそれを活用するスキルを身に付けるための教育を実施し、認定者のみ営業活動ができるしくみがあります。
キャリアパスの明確な提示
営業職の将来像を示すことは、長期定着を促す重要な要素です。
- 役職や等級の昇格条件
- キャリアの選択肢(マネージャー職、専門営業職など)
- スキルアップのための支援制度(資格取得支援など)
- 成功している先輩社員のキャリア事例
特に若手人材は、「将来どうなれるのか」という点に強い関心を持っています。明確なキャリアパスを示すことで、長期的な視点での入社意欲を高めることができます。
代替策としての営業代行サービス活用のポイント
採用が難しい場合の選択肢としての営業代行
どれだけ採用活動を頑張っても、優秀な営業人材を確保できないケースもあります。そんな時の選択肢として「営業代行サービス」があります。
営業代行サービスとは、外部の専門会社に営業活動を委託するサービスです。以下のようなメリットがあります。
- 採用・教育コストがかからない
- 専門知識を持った営業担当者がすぐに活動開始できる
- 繁忙期だけなど、必要な時だけ利用できる
- 成果報酬型の場合、リスクを抑えられる
特に、営業体制の構築途上にある企業や、急な人材不足に悩む企業にとって有効な選択肢となります。
関西営業代行事務所のクライアント様も上記の理由で依頼されるケースが多いです。もっとも多い理由は営業マンの採用と定着が、困難である、不可能であるというものです。
営業代行サービス選定時の注意点
営業代行サービスを選ぶ際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 自社の商品・サービスに関する業界経験の有無
- 過去の実績(具体的な数字や事例)
- 料金体系(固定費か成果報酬型か)
- 情報共有の方法(報告頻度や形式)
- 契約期間と解約条件
特に重要なのは「相性」です。自社の商品・サービスや企業文化に合った営業代行会社を選ぶことが成功の鍵となります。
自社営業部門と営業代行の効果的な併用方法
営業代行は「全面委託」だけでなく、自社営業部門と併用することも可能です。
- 新規開拓は営業代行、既存顧客フォローは自社営業
- 特定の地域や業種だけ営業代行に委託
- テレアポ(電話での初期接触)は営業代行、商談は自社営業
- 繁忙期のみ営業代行を追加利用
このような併用により、自社の強みと営業代行の専門性を組み合わせた効果的な営業体制を構築できます。
営業代行の利用で、御社の営業力を格段に上げることが可能になります。例えば今の営業力「2」レベルを「7」や「8」レベルに上げる。自社営業と併用することで、「8」レベルの営業力を「15」レベルにすることも可能です。
※「10」レベルを100%と仮定した場合
業種・業界別の営業人材採用注意点
BtoB営業特有の採用ポイント
企業向け(BtoB)営業は個人向け(BtoC)営業とは異なる特性があります。以下のポイントに注意しましょう。
- 商談のクロージング(成約)までの期間が長い営業に向いているか
- 技術的な知識や業界知識の習得能力
- 社内調整能力(技術部門や経営層との連携)
- 提案書作成能力やプレゼンテーションスキル
特に法人営業の経験がある人材を採用する場合は、担当していた顧客規模や商談サイクルが自社と合っているかを確認しましょう。
BtoC営業における適性判断
個人向け(BtoC)営業の場合は、以下のような適性が重要です。
- 短期間での信頼関係構築能力
- テンポの良い会話力と説明力
- 感情への共感力と心理的アプローチ
- 多数の顧客対応による精神的・体力的負担への耐性
特に小売・サービス業など直接消費者と接する営業では、コミュニケーション能力の高さが重要な判断基準となります。
特殊な商材・サービスの営業人材に求めるべき素質
特殊な商材やサービス(保険、不動産、金融商品、ITソリューションなど)の営業には、以下のような素質が求められます。
- 専門知識の習得意欲と理解力
- コンプライアンス意識(法令遵守の姿勢)
- 顧客の長期的利益を考えられる誠実さ
- 複雑な商品・サービスをわかりやすく説明する能力
特に資格が必要な業界では、資格取得の意欲や学習能力も重要な判断材料となります。
まとめ:採用成功のためのチェックリスト
営業人材の採用成功に向けて、以下のチェックリストを活用してください。
採用前の準備
□ 自社の営業スタイルと必要なスキルを明確化した
□ 適切な採用基準を設定した
□ 現実的な予算と採用スケジュールを計画した
求人票作成
□ 具体的な仕事内容を記載した
□ 成長できる環境をアピールした
□ 給与・インセンティブ体系を明確に提示した
採用チャネル選択
□ 自社に合った採用チャネルを選んだ
□ コスト対効果を考慮した
□ 複数のチャネルを組み合わせた
面接・選考プロセス
□ 営業適性を見極める質問を準備した
□ 過去の営業成績を適切に評価する方法を決めた
□ 実践的なロールプレイングを導入した
採用後のフォロー
□ 入社後のギャップを防ぐための情報を開示した
□ 研修体制・教育制度を明確に説明した
□ キャリアパスを具体的に提示した
代替策の検討
□ 必要に応じて営業代行サービスの活用を検討した
□ 自社営業と営業代行の併用方法を考えた
営業人材の採用は簡単ではありませんが、この記事で紹介したポイントを押さえることで、より効果的な採用活動ができるでしょう。また、採用難が続く場合は、営業代行サービスの活用も視野に入れることで、柔軟に営業体制を構築していくことが可能です。
「良い人材がいない」とあきらめる前に、採用方法や営業体制の見直しを検討してみてください。
※マインドマップをクリックすると印刷用のマップが表示されます。印刷してゆっくりご覧いただくことができます。