「売る側」と「買う側」のギャップを埋める営業術
営業という仕事を突き詰めて考えると、実は「売る側」と「買う側」の間にあるギャップをどう埋めるかが鍵になります。このギャップを正しく理解し、橋渡しをするスキルが営業の本質と言っても過言ではありません。
私は、若手営業マンを対象にした研修を行う機会があります。その中核をなすのが「セールスリテラシー®」を身につけること。この考え方を通じて、「売る側」と「買う側」の間に生じるすれ違いを解消し、より効果的な営業活動をサポートしています。
たとえば、商品知識や業界理解はもちろんですが、それだけでは十分ではありません。顧客の悩みを的確に捉え、解決策を提案する力、そして信頼関係を築く力も含まれます。研修では、スキルを単に学ぶだけでなく、実際の現場で活用できるレベルに引き上げることを目標としています。
「自分たちは何を売っているのか?」から始める
研修の冒頭、私は必ず次の質問を投げかけます。「みなさんが売っている商品は何ですか?その機能や特徴、どんな役に立っていますか?」多くの方はすぐに答えます。それは当然のことで、日々扱っている商品については熟知しているからです。
しかし、次にこう尋ねると、少し空気が変わります。「その役立つポイントは、本当に見込み顧客にとって価値があるのでしょうか?」
この問いを深掘りすることで、「売る側の視点」に偏りがちな考え方を振り返る機会を提供します。同じ商品でも、顧客によって感じる価値は異なるはずです。そのギャップを理解することが、次のステップへの大切な第一歩です。
「誰のどんな問題を解決しているのか?」
さらに核心に迫るために、次の質問をします。「皆さんが売っている商品は、誰のどんな問題(悩み)を解決していますか?」
この問いには、多くの方が考え込んでしまいます。なぜなら、これが「見込み顧客の視点」に立った質問だからです。
ここで大切なのは、自分の商品を「どれだけ優れたものか」ではなく、「誰にとって、どんな価値(問題解決)を提供できるのか」という視点で捉え直すことです。この問いにしっかり向き合うことで、自分が提供している価値の本質を見極められるようになります。
見込み顧客の視点を持つ重要性
営業で成果を上げるためには、このように「買う側の視点」を持つことが求められます。例として提案資料を作成する時は、以下のようなプロセスを取り入れてみてください。
- 顧客の課題を深く理解する
顧客が抱える悩みや不安を具体的に洗い出し、それに優先順位をつける。
- 商品がどのように課題を解決するのかを明確にする
商品の特徴をただ列挙するのではなく、それが顧客の課題をどのように解決できるのかを示す。
- 提案のシナリオを「買う側のストーリー」に沿って構築する
顧客がその商品を使うことでどんな未来が実現するのかを、ストーリー仕立てで伝える。
最後に
視点を「売る側」から「買う側」へシフトすることで、顧客の心に届く提案ができるようになります。その結果、顧客からの信頼を得られる営業マンへと成長できるでしょう。
「誰のどんな問題(悩み)を解決しているのか?」という問いを常に意識しながら、日々の営業活動に取り組んでみてください。それが、より効果的で意味のある営業につながります。